独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます
「社長、奥様がいらっしゃいました」
「ああ、ありがとう」
今日のうちに何度〝奥様〟と呼ばれただろう。そのパワーワードを胸で噛み締めて、智也さんの方を見た。
「半日働いてみて、何か不都合や不満なところはないか?」
「はい、大丈夫です。皆さん優しい方たちばかりです」
「そうか」
その質問に答えたあと、少しの間沈黙になった。
……ん? どうしたんだろう?
もしかしてこれを聞くためにわざわざここに呼んだってこと?
メールでもよかった内容では? と思いながら、黙って智也さんの姿を見ていると、彼は私の方に向かって歩いてきた。
じっと私を見つめて視線を外さない。その彼の様子を見ていると、なんだか少し照れて恥ずかしくなってきた。
「あの……何でしょうか……?」
あまり見られていると、穴が開いてしまいそう。それに条件反射的に鼓動が早くなってくる。
ゴホン、と小さく咳払いをして、智也さんは話し始めた。