独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます
いろいろ複雑なことが混ざり合って、今回の結婚に至っている。
「ただいま」
自宅に到着し扉を開ける。いつもなら詩織がパタパタと足音をたてて子犬みたいに駆けよってくるはずなのだが――
今日は来ない。
どうしたのだろう、と廊下を進んでリビングを覗くと、ラグの上にぺたんと座っている彼女の後ろ姿が見えた。
オフィスで見かけた白いニットに紺のフレアスカートの上からエプロンをしている。
ハーフアップに纏めている茶色の髪も華奢で小さな背中も、こちらに向いている足の裏までも可愛いのだから困ったものだ。
その可愛さを全く自覚していないようだから、余計に悩まされている。
「詩織?」
彼女の名前を呼んでも、まだ気が付かない。何か考えごとでもしているのだろうか。
ちょっとしたいたずら心が働いて、彼女の背後に忍びより、後ろからぎゅっと抱き締めた。