独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

 別れ際、彼女から名前を教えてほしいと言われた。それなのに気が動転していたので「名乗るほど者ではない」などと言ってしまった。

 人生最大のチャンスを棒に振るなんて、何をやっているんだ! とめちゃくちゃ悔やんだ。

 格好つけずに名前を名乗って、彼女の連絡先を聞くべきだった。

 分かっているのに、こんなときにうまくできないなんて。仕事ならこんなミス絶対にしないのに。恋は人を狂わせる。

 しかしお礼がしたいと言ってくれた詩織は、名刺を渡してくれた。

 その名刺に載っている電話番号にコールすれば、彼女と話ができる。他愛のない話をすることもできるし、食事に誘うことだってできる。

 詩織からもらった名刺を握り締めて、喜んだのも束の間。
 名刺に書いてある電話番号に電話をかけると、Valerieのサロンに転送がかかっていた。

『はい、Valerieです』
 男性の声が耳に入ってきて、ドキドキしてかけたこの純粋な思いを返してくれと言いそうになった。
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