独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

 白髪でメガネをかけたおじさまで、とても清潔感のある気品のある男性だったから印象的だったのだ。
 いきなり話しかけるものだから、運転手さんを驚かせてしまった。
 急に大きな声で話したらびっくりさせちゃうよね、ごめんなさい。

「あのときは、とても美しいドレスをお召しになられていましたね」
「その節はどうも」

 また会えてよかった。あのとき助けてもらわなかったら、私どうなっていたか分からない。
 隣に座っている智也さんの方を向いて、もう一度お礼を言う。

「あのときはありがとうございました」
「……思い出したのか?」
「はい。兄から全部聞きました。どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか?」
「自分から言い出すなんて格好悪いだろ。詩織が思い出してくれるのを待ってた」
「運転手さん付きの車があるなんて知らなかったから……」
「普段は自分で運転するからな。こういうお酒を飲むときとか、会社からどこかに行くときに利用しているんだ」
「そうだったんですね」

 和やかな雰囲気のままマンションの前に到着し、私たちはマンションのエントランスへと入る。


< 266 / 284 >

この作品をシェア

pagetop