独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

「ここにいて」
「服! 服を着てください」
「……あ、ごめん」

 彼は自分が半裸だということを忘れていたようで、自分の状況を理解してくれたのか、私の手を離してくれた。

「すぐに着てくるから、そこに座って待ってて」
「……はい」

 バタバタと奥の部屋に入っていった佐々木さんを見送ったあと、その場にしゃがみこんで両手で顔を覆った。

 わぁぁ……何なの、この状況。

 想像していたものと全く違う。こんなに爽やかで格好いい人が現れるなんて思ってもみなかった。

 興奮が収まらなくて、胸が壊れそうなほどの動悸だ。全身の熱が上がって逃げ出したいくらいテンパっている。
 佐々木さんのことを勝手に「恋愛経験のない男性なんじゃないか」と想像して親近感を抱いていたことを申し訳なく思う。私と同類なんかじゃない。
 たぐい稀に見るイケメンだった。彼が恋愛経験乏しい人なわけない!
 
そんな人がなぜ? と疑問を抱かずにはいられないけど、今は驚きのあまり思考が回らない。


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