目覚めたら、社長と結婚してました
「もったいないとか、好みとかどうでもいい。俺たちは結婚したんだ。お前は俺のものなんだよ」

 射貫くような眼差し、さっきまでとは打って変わって真剣な表情。彼の仕草、言葉一つひとつがまるで呪文のように私の動きを止めた。投げかけられた言葉の意味さえなかなか理解できない。

 彼がついていた手を浮かして、そっと距離を取ったところで私は自分を奮い立たせるように口を開く。

「でも、まさか自分が二十五で結婚するとは……って、私、もう二十六じゃないですか!」

「そうだな」

 セルフツッコミにあっさり同意が入る。誕生日は十月なので今の私は二十六歳だ。たかが一歳、されど一歳。二十五のときは微妙な感じだったけれど、二十六となるともう立派な二十代後半だ。

「ちなみに社長は私の誕生日、なにかお祝いしてくれました?」

「お前が耳につけてるだろ」

「え、これって社長からのプレゼントだったんですか!?」

 つけっぱなしのピアスに思わず触れた。彼からの贈り物だったことに驚くべきか、このピアスを開けた経緯について聞くべきか。

「……ありがとうございました」

 とりあえずお礼を告げ、さらに質問をしてみる。

「あの、私たちの出会いってやっぱり会社ですか?」

「いや」

 あっさりと否定されて、私はきょとんとした面持ちになった。彼は私の顔色を読んだらしく補足してくる。

「バーだ」

「バー!?」

 思わず叫んでしまい、私は慌てて口を押えた。
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