目覚めたら、社長と結婚してました
「怜二さん、なんだか家出した妻を迎えに来た夫みたいですね」
「実際、そんなもんだろ」
からかうように言うと、あっさりと肯定されたのでつい吹き出してしまう。
「そうですか。なら、迎えに来てくださってありがとうございます」
「お前くらいだよ、俺に迎えに来させる女なんて」
そうかもしれない。仰々しい言い方にますますおかしくなる。
「お手数おかけする妻ですみません」
くすくす笑いながらおどけてみせると、怜二さんは視線をこちらに寄越してきた。不意に目線が交わり、私は笑いを収める。
どうしよう。きちんと謝るべきだったのかな。
彼と目を合わせたまま不安になっていると、怜二さんの形のいい唇が動いた。
「妻を迎えに行くのは夫の務めだからな。お前が望むならどこへでも迎えに行く」
そう言って彼はこちらに身を乗り出し、私の右手に自分の左手を重ねる。そして右手を伸ばし、軽く私の頬に触れた。
「だから、お前はおとなしく俺のところに帰って来ればいいんだ。……おかえり、柚花」
ただいま、って返せばいいだけ。けれど、どうしてかこのときは声にならなかった。胸の奥からじんわりと熱いものが込み上げて来て、息が詰まる。
首を縦に振るのが精いっぱいだった。それでも彼は嫌な顔ひとつせず優しく笑ってくれた。
車が走り出し、私はわざとらしく流れる景色に目を走らせる。いざ帰るとなったものの記憶がない私にとっては初めての場所だ。
ましてや異性と、彼と一緒に住むのだから頭では理解していても気持ちが簡単には落ち着かない。
「実際、そんなもんだろ」
からかうように言うと、あっさりと肯定されたのでつい吹き出してしまう。
「そうですか。なら、迎えに来てくださってありがとうございます」
「お前くらいだよ、俺に迎えに来させる女なんて」
そうかもしれない。仰々しい言い方にますますおかしくなる。
「お手数おかけする妻ですみません」
くすくす笑いながらおどけてみせると、怜二さんは視線をこちらに寄越してきた。不意に目線が交わり、私は笑いを収める。
どうしよう。きちんと謝るべきだったのかな。
彼と目を合わせたまま不安になっていると、怜二さんの形のいい唇が動いた。
「妻を迎えに行くのは夫の務めだからな。お前が望むならどこへでも迎えに行く」
そう言って彼はこちらに身を乗り出し、私の右手に自分の左手を重ねる。そして右手を伸ばし、軽く私の頬に触れた。
「だから、お前はおとなしく俺のところに帰って来ればいいんだ。……おかえり、柚花」
ただいま、って返せばいいだけ。けれど、どうしてかこのときは声にならなかった。胸の奥からじんわりと熱いものが込み上げて来て、息が詰まる。
首を縦に振るのが精いっぱいだった。それでも彼は嫌な顔ひとつせず優しく笑ってくれた。
車が走り出し、私はわざとらしく流れる景色に目を走らせる。いざ帰るとなったものの記憶がない私にとっては初めての場所だ。
ましてや異性と、彼と一緒に住むのだから頭では理解していても気持ちが簡単には落ち着かない。