溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「お前は……」

ハーッと遥が今日二回目の溜め息をつく。

珍しく彼が困る姿を見て、少し胸がスーッとした。

「麻布まで」

苛立ちを抑えた声で遥が運転手に行き先を告げる。

「彼氏に浮気されたくらいで自棄になるなよ。お前が損をするだけだ」

長い脚を組むと、彼はネクタイを緩めながら説教を始める。

「遥には関係ない」

彼に会わなければ、きっと今頃知らない男の人に話しかけられて、ホテルに行っていたはず……。

胸の中のもやもやは大きくなる一方だ。

どうすれば楽になれるの?

「お前、ホント子供だな」

遥は私の顔をじっと見て呆れ顔で呟く。

「ジジイに言われたくない」

その発言が面白くなくて言い返すが、彼は人を馬鹿にしたようにクスッと笑った。

「俺にそんな口聞くのはお前くらいだよ」

「あんたがちっとも紳士じゃないからでしょう!」
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