溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
小さく返事をするが、身体がまだ動かせない。

すると、遥がギュッと私を抱き締めた。

「もう大丈夫だ」

彼に抱き締められて、ようやく身体の感覚が戻ってきた。

「……敵はまだいるの?」

やっとのことで声を出して聞けば、彼は辺りを警戒して声を潜める。

「ドアの外には敵が五、六名はいる。煙で周りが見えにくいとはいえ、今出たら撃たれるだろうな」

その言葉を聞いて、怖くなった。

「……遥は敵をかわしてきたの?」

「悪運は強いんだ」

ニヤリと遥は笑う。

なんて無茶をするんだろう。

「さあて、どうやってここから脱出するか?」

私に質問するというよりは、彼は自問自答するように呟いて周りを見回す。

その視線は、天井の換気口を見て止まった。

「あそこから出るか」

独り言のように言って、遥は換気口の下に椅子を置き、その上に乗って蓋を開ける。
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