溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「行けそうだな」

中を覗き込むと、彼は私に換気口の蓋を手渡した。

「それ下に置いて。ここから逃げる」

蓋をそっと置くと、遥は私の腰を掴んで抱き上げる。

通気口のふちを掴んで中に入れば、真っ暗でよく見えない。

遥も上がって来て、スマホのライトで前を照らす。

すると、いくつものパイプが通っていて、人が何とかひとり通れるくらいの空間があった。

「とりあえず前に進んで」

遥の指示で匍匐前進する。

足が擦れて痛いが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

周囲の物音を気にしながら前に進むも、一向に出口が見えてこなかった。

まるで出口のない迷路に入ってしまったかのようだ。

救いは、今は遥が一緒だということ。

数百メートルくらい移動しただろうか?

微かに庭のライトのような明かりが見えた。

これで出られる。
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