溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
「お前が寝てる時にダウンロードしておいたんだが、ここで役に立つとは思わなかったな」

そう話して彼は苦笑する。

その時、ヘリの音がした。

「来たか」

遥は目視でもヘリの姿を確認すると、換気口の蓋を蹴破った。

「さあ、出るぞ」

周囲を確認しながらまず遥が外に出ると、私も彼に助けられて下りる。

バババババンと銃撃の音がして身がすくんだ。

遥が私の盾になるようにしっかりと肩を抱き、ヘリに向かって手を振る。

恐らくあれが救助のヘリなのだろう。

頭上ではヘリがホバリングして中からロープが下された。

続いてアメリカ兵らしき軍人がひとりロープを伝って素早く下り、私達に手を差し伸べる。

その兵士に英語で「早く」と声をかけられ、遥が私の背中を押した。

「楓!行け!」

ヘリの爆音の中兵士の手を借りてロープを上る。


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