溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
だが、また銃撃の音がした。

思わずギュッと目をつぶって身を屈め、空中で動きを止めるが、遥の「うっ」という呻き声が聞こえてハッとした。

カッと目を見開いて叫ぶ。

「遥〜!」

彼は左腕を押さえてしゃがみ込んでいた。

だが、私の声に反応してその顔を上げる。

「大丈夫だ!構わず上れ!」

遥は厳しい顔で声を張り上げる。

逆らわずに、言われるままロープを登ってヘリに乗り込むと、遥も上って来た。

だが、銃撃の音は止まらない。

ヘリの中から兵士が敵を狙い撃ちして遥を援護する。

彼がまた撃たれるんじゃないかと思って気が気じゃなかった。

時間にしたらほんの数十秒。

でも、その十倍の時間に感じた。

遥が苦悶の表情でヘリに乗り込む。

とりあえずホッとするが、彼の腕に目を向けた。

腕の部分が血で濡れている。
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