溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
修也に近況を知らせるメールを打ちつつ適当に返事をすると、彼女は大声で反論した。

「ここ、三階で一番上の階だよ!」

騒がしい奴と思いながらも、軽くあしらう。

「じゃあ、気のせいだろ」

「でも……確かに音が」

震える声で楓は否定する。

「そんなに座敷童が怖いなら、添い寝してやろうか?」

「結構です!」

また静かになったが、しばらくすると襖がガラッと開いて、突然楓が俺の布団に入ってきた。

これは、俺の想定外。

俺を警戒してこちらには来ないと思っていた。

驚きで言葉をなくす俺の胸に彼女はギュッと抱きつく。

「お兄ちゃん、お化け怖い」

『お兄ちゃん』?

何を寝ぼけたこと言ってるんだ。

「楓?」

彼女の名を呼んでその顔を覗き込むが、反応しない。

すぐに楓の寝息が聞こえてきて、思わず苦笑した。
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