わたしと専務のナイショの話
のぞみ、か。
翌朝、のぞみは支度をしながら、夕べ、京平が恥ずかしそうに呼んだ、
『のぞみ』
を何度も思い出していた。
なんだろう……。
なんか照れるな、と思っていたのだが、朝、迎えに来てくれた京平はまったくいつも通りで。
のぞみにも、普通に、
「おはよう」
と言い、あとはのぞみより、両親と話していた。
京平の車に乗って、シートベルトを閉めながら、のぞみは思う。
……うーむ。
これでは私ひとりが専務を意識してるみたいではないですか。
そんな莫迦な、と思いながら、見送ってくれた父母に、
「行ってきますー」
と手を振った。
父、信雄(のぶお)の出勤時間はまだなので、ついでに見送ってくれたのだ。
信雄は京平が迎えに来てくれたことについて、特に文句は言わなかったが。
玄関先で、腕を組んで仁王立ちになり、門番か? と問いたくなるような体勢で見送っている。