わたしと専務のナイショの話
「だが、まあ、安心したぞ。

 そうだ。
 運転好きなら、車両部に配属してやろうか」
と京平は、さも親切そうに言ってくるが。

「それ、実質、会社から出されるってことですよね……?」

 車両部は別の会社が運営しているからだ。

 なんとか、私を切り離そうとしているようだ、と思ったが、せっかく運良く大企業に就職できたのに、出されたくはない、と思っていると、

「坂下と聞いたとき、嫌な予感がしたんだよな」
と京平が前を見つめ、言い出した。

「お前のことはよく覚えていたからな」
と言われ、つい、どきりとしてしまったのだが、京平の語りに、そのどきりもすぐに消え果てる。

「俺は、今まで、数千人の女生徒を相手にしてきたんだが」

「先生、なにかいかがわしく聞こえます……」

「覚えているのは、特別よく出来た奴と、特別よく出来ない奴だけだ」

 私はどちらですか、とは訊きたかったのだが、まあ、訊くまでもないような気もしていた。

「ああ、そこだぞ」
と京平が左手を指差す。

 街路樹の向こうに昼の日差しに眩しい大きなビルが見えた。





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