わたしと専務のナイショの話
 


 取引先の会社では、本当にただ、専務が顔を出す、ということが重要だったらしく、たいした話はなかった。

 だが、外に出た瞬間、京平は妙にホッとした顔をする。

「よかった。
 居なかったな……」

 誰が?
 なにが?

 愛人とか? と思ったあとで、

 いや、先……、専務、独身だったな、と気づく。

 っていうか、愛人と出くわしたとしても、見てるの私だけだし。

 最悪、私の口を塞げばいいだけだ、と思った瞬間、さっきの、『お前を食べるためさー』が頭に浮かんでしまった。

 明るい街中で、そんな妄想に耽っていると、妙に軽やかな気分になっていたらしい京平が、
「ちょうど昼だな。
 なにか食べてくか。

 奢ってやろう。
 なにがいい?」
となどと言ってきた。
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