わたしと専務のナイショの話
「え、そんな申し訳ない……」
と言いながら、なんとなく、近くの店を見回していると、すぐ近くに会社のショールームがあった。

 ガラス張りの向こうに、これ、何処の家が設置するんだと思うような豪華な浴室が見える。

 ショールームを見るのは楽しいが、家を建てるわけでもないのに入るのもな、と思って、いつも通りかかるたび、眺めるだけなのだが。

 小さなブティックに入ったら、買うまで出られないような圧迫感を感じるが、それとちょっと似てるかな、と思っていると、

「なんだ。
 見たいのか。

 そうか。
 たまには覗いていくか」
と京平が言い出した。

「いや、いきなり、専務に来られるとか。
 ショールームの人たち、抜き打ち検査みたいで、緊張するんじゃないんですか?」
と言ったのだが、京平は、

「知らんだろ、俺の顔なんぞ」
と軽く言ってくる。

 まあ、確かに。

 私も知りませんでしたしね、と思っている間に、行動の早い京平はもうショールームに入ってしまっていた。
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