わたしと専務のナイショの話
「でも、樫山さんとは、すっかり仲良しさんですね。
 じゃあ、私との結婚もする必要な……」

「なにを呑もうかな」
と遮る京平に、たまには聞いてください、私の話、とのぞみは思う。

 そのとき、ふいに京平が言ってきた。

「泊まらなきゃいいんじゃないかな」
「え」

「確かに、一泊旅行はお父さんたちの反感を買いそうだ。

 でも、二人では出かけたい。

 泊まらず、帰ってくればいいんじゃないか?

 あと」
とのぞみの手を握ってくる。

「これから、うちに来ても、泊まらなきゃいいんじゃないか?」

 テーブルの上のランプが京平の整った顔を映し出していて、やっぱり綺麗な顔をしているな、とのぞみは、ぼんやり思った。

 先生が転勤してきたとき、みんな、大騒ぎだったもんな、と思いながら、

「……私、やっぱり、専務に騙されてる気がします」
とのぞみは言う。
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