わたしと専務のナイショの話
 



「名簿の名前、間違ったら、大恥だからな。
 絶対、間違うなよ。

 漢字、特に注意な」

 仕事のときは、というか、仕事以外でも常に容赦のない祐人に言われ、……はい、とのぞみは緊張して、A4のコピー用紙を握った。

 祐人は年代物の台帳のようなものを広げている。

「では、行きます」
とのぞみは、まず、祐人に言われた通りに、名前を読み上げ、次に電報を打つときの要領で漢字を説明しながら、読み上げる。

「みずお あき。

 水たまりの水に、尾っぽの尾。
 悪いの下、心がない亜に、動悸、息切れ、めまいの悸です」

「……他の説明の仕方はなかったのか。
 水尾亜悸さんに殴られるぞ」

 わかりやすいかと思ったんだが……。

 仕方がないので、できるだけ、ご無礼のない言葉に振り替えながら、漢字を説明する。

 うん、うん、と台帳を見たまま、祐人はチェックしているが、本当に自分の言い方で正しい漢字が伝わっているのだろうかと不安になる。

 なにかこう、入社試験のときより、学力を試されているような……と思っていると、

「待て」
と祐人が言ってきた。
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