わたしと専務のナイショの話
 



「失礼します」

 昼休みが終わり、お茶を出しに、専務室に行ったのぞみは、デスクにお茶を置きながら、チラと京平の顔を窺った。

 実はやっぱり見間違いだったりと思ったのだ。

 額を消しゴムで撃たれたにも関わらず。

 だいたい、他県で教師をしていたはずの男が何故、此処に居るんだ?

 だが、京平はノートパソコンを見たまま、お茶を飲み、言ってくる。

「よく入社試験を通ったな」

 は? と見ると、
「自転車で坂が上れないとか言ってた根性なしが」
と付け加えてくる。

 銀縁の眼鏡の向こう、京平の切れ長の目がこちらを見ていた。

 つい、どきりとしてしまう。

 言うことは辛辣だけど、このルックスだから、人気だけはあったんだよな~、槙先生。

「っていうか、なんで此処に居るんだ?
 大学こっちだったか?」
と訊かれる。
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