その瞳は、嘘をつけない。
実加が本心を隠すのは、失恋の痛手ではなく元々の性格だということがわかった。
これでも大きな収穫かもしれない。

話の着地点が見えてきたところで、俺の車にたどり着いた。
「話してくれてありがとう。」
キーを取り出し解錠する。

「あの、僕にはこんなこと言う資格ないのわかってますけど、
実加のこと、大事にしてやってください。」

深々と頭を下げる、この男。
本当に実加のことを想っているんだなと伝わってくる。
「ああ、もちろん。」

そのまま車に乗り込み、病院を後にする。
タバコは吸わない。
今夜はどんなに遅くなっても、実加のとろこに行くと決めたから。
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