その瞳は、嘘をつけない。
さっきから話が右往左往していて、
私の親や、耕平の話題まで出て来たのに

何にも解決してない上に

秀くんが、さり気なく続けた言葉に、
思い出したくなかったことを思い出す。


赤いコートの、あの人。


「実家に連れて行くなら、もっと相応しい人がいるんじゃない。
私じゃなくて…。」

秀くんの顔を見上げて睨みつけてやりたいところだけど、きっとできない。

今顔を上げて秀くんの顔を見てしまったら、
涙が溢れてくる。
だから、このまま。
頭を胸に預けたまま。
< 172 / 218 >

この作品をシェア

pagetop