その瞳は、嘘をつけない。
猫の話題になり、くすくすと笑い出す実加。

先程までは、会話を望んでいないような雰囲気をこれでもかと醸し出していたのが、
少し和らいできた。

「お正月に帰省するなら、ミカに会えるね。」

'正月'も'帰省'も、実加にとってはあくまで世間の年中行事であって、他人事なんだろう。
盆にですら実家に帰っていた様子もなかった。
同じ街だというのに。


そして、母親から返信の催促が来ていたことを思い出す。

"帰ってくるなら実加ちゃんも一緒にね!"

催促というより、要求という方が正しそうだ。

「あぁ…正月と言うより年末にちょっと顔を出してくる。元日は出番だから。」
「やっぱり忙しいんだね。」
「忙しいというより待機だけどな。
正月早々面倒が起こらないよう祈ってるよ。」
「そうだね。」

「お前も来るか?年末年始は店も休みだろう?」
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