向日葵
ふと、何かが鳴っていることに気付き、弾かれたようにその音の正体を探ってみれば、それはバッグの中から聞こえ、おまけにマナーモードの振動音だと理解したのだが。
携帯の存在さえも忘れていたなと、そう思いながらそれを持ち上げてみれば、ディスプレイに表示された名前に、思わず目を見開いた。
見開いて、涙を拭ってもう一度確認してみても、そこには間違いなく、“クロ”と表示されているのだから。
どうしたものかと思ってしまうのだが、ひとつため息を吐き出しあたしは、その通話ボタンに親指を掛けた。
―ピッ
「…はい。」
『お前、今どこ?』
「…えっ…」
『智也がさぁ。
お前が消えたとか言ってて。
昨日も帰って来なかったし、携帯に掛けても出ないし、って。』
あぁ、それでクロが電話なんかしてきたのか、と。
そういえば昨日の夜、智也に帰らない旨のメールを送ったきりだったなと、今更ながらに気付き、悪いことをしたなと思ってしまう。
「ごめん、着信に気付かなかっただけだよ。
電車乗る時にマナーモードにしてから、そのまま忘れてた。」
『電車?
って、お前今、マジでどこに居んの?』
そう、少し怪訝そうな声が、電話越しに聞こえたのだが。
もうあたし達は何の関係もないはずなのに、なのに何故、そんなことを聞くのだろうか。
少し見ていなかった間に、すっかり海の色は暗くなり、辺りにも宵闇の帳が下り始めた。
「海、だよ。」
『は?
お前、何考えてんだよ?!』
智也に怒られるならまだしも、クロが怒ってる理由がわかんなくて、そんな言葉に、思わずあたしは、携帯を耳から離してしまった。
電話口からはあからさまに舌打ちが吐き捨てられ、無意識のうちに唇を噛み締めてしまう。
携帯の存在さえも忘れていたなと、そう思いながらそれを持ち上げてみれば、ディスプレイに表示された名前に、思わず目を見開いた。
見開いて、涙を拭ってもう一度確認してみても、そこには間違いなく、“クロ”と表示されているのだから。
どうしたものかと思ってしまうのだが、ひとつため息を吐き出しあたしは、その通話ボタンに親指を掛けた。
―ピッ
「…はい。」
『お前、今どこ?』
「…えっ…」
『智也がさぁ。
お前が消えたとか言ってて。
昨日も帰って来なかったし、携帯に掛けても出ないし、って。』
あぁ、それでクロが電話なんかしてきたのか、と。
そういえば昨日の夜、智也に帰らない旨のメールを送ったきりだったなと、今更ながらに気付き、悪いことをしたなと思ってしまう。
「ごめん、着信に気付かなかっただけだよ。
電車乗る時にマナーモードにしてから、そのまま忘れてた。」
『電車?
って、お前今、マジでどこに居んの?』
そう、少し怪訝そうな声が、電話越しに聞こえたのだが。
もうあたし達は何の関係もないはずなのに、なのに何故、そんなことを聞くのだろうか。
少し見ていなかった間に、すっかり海の色は暗くなり、辺りにも宵闇の帳が下り始めた。
「海、だよ。」
『は?
お前、何考えてんだよ?!』
智也に怒られるならまだしも、クロが怒ってる理由がわかんなくて、そんな言葉に、思わずあたしは、携帯を耳から離してしまった。
電話口からはあからさまに舌打ちが吐き捨てられ、無意識のうちに唇を噛み締めてしまう。