向日葵
目を見開けば、漆黒の中で彼の吐き出した白灰色が、風に消えた。


あたしは一体何を期待していたのだろうかと、そんな台詞に、無意識のうちに自嘲気味に笑ってしまって。



「…何、それ…」


「言葉のままだよ。」


ならば何故、迎えになんて来たのだろう。


そんなことを言うためにだとするならば、あまりにも残酷だなと、そう思ってしまって。



「アンタにとって、あたしって何?」


「じゃあ聞くけど。
お前にとって、俺って何?」


まさか逆に聞かれるとは思いもせず、目を見開いたあたしに、“ほら、答えられないじゃん”と、そんな台詞。


唇を噛み締めてみれば、彼は短くなった煙草を砂の中へと押し込め、それを消した。



「もう帰ろうぜ。」


「…やだっ…」


「あ?」


「あんな街になんかもう戻りたくないし、アンタの影を探すのも、もう嫌なの!」


吐き出すように声を荒げれば、“夏希”と、彼はそう、小さくあたしの名前を呼んだ。


呼んで、伏し目がちに落とした視線に、あたしはと言うと、肩で息をすることが精一杯で。



「随分と身勝手な台詞だね。」


「じゃあ、何で迎えになんて来たのよ?!
あたしなんかもう、放っておけば良いじゃない!!」


「…お前、俺にどうして欲しいの?」


「―――ッ!」


ただ真っ直ぐにこちらに向けた視線のままに、彼は問う。


いつまで経っても答えなんて見つからない押し問答に、どうすることも出来ず、次第に視界が歪み始めて。



「俺が帰って来て欲しいって言ったら、お前は帰って来てくれる?」


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