向日葵
「そうだ、智也!」


「…何?」


「あたし、アンタの誕生日この前祝えなかったし、お詫びのプレゼント買ってたんだった!」


きっと嫌な予感がしたのだろう彼は、少し不審そうにこちらを見つめるのだけれど、あたしはと言えば、ベッドの下に投げていたものを引っ張り出した。


大きい茶封筒にリボンをつけただけのシンプルな包みなのだが、笑顔で手渡してみても、彼の顔が変わることはないまま。


多分、想像に易かったのだろう。



「喜びなよ。
今年は二冊だし、しかも金髪特集だよ?」


「喜べるかよ。
毎年毎年、エロ本ばっかじゃねぇか!」


「不満?」


「不満に決まってんじゃん。
それより、誰か女紹介しようよ。」


折角あげたのに智也は、中身を見ることもなく口元を引き攣らせるばかり。


まぁ、そんな顔が面白くて、中二の頃からこればかりなんだけど。



「梨乃とヨリ戻せば?」


「…いつの話してんだよ。」


やれやれと呆れ半分で、彼は再び煙草を咥えてしまう始末。


部屋の色はすっかり明るく染められ、色褪せたフローリングが照らされていた。



「とりあえず俺、仕事残ってるから帰るわ。
つか、たまたま近く通っただけだし。」


「うん、サンキュ。」


「おう!
仕事一段落ついたら、また飯でも行こうぜ。」


咥え煙草のまま、そう言った智也はキッチリとあたしのプレゼントしたエロ本を手に、部屋を出た。


その後ろ姿を見送ってみれば、あたしもこもってばかりじゃ居られないなと、そう思わされる。


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