御曹司の愛され若奥様~24時間甘やかされてます~
「信じ……ません」

「えー」

何で? と大和田さんは聞いてくるけれど、私は何も答えずに洗い物を再開する。


だってそんなの、信じられる訳がない。
昔会ったことがあるのは、もしかしたら本当かもしれない。
だけどその時に会った私が初恋の相手、なんて。
そんなの彼のリップサービスに決まっている。
そう、それこそ私の機嫌を取るための……。


食器を全て洗い終え、水道を止めた後、私は口を開いた。


「それ以上、気を遣わなくていいですよ」


大和田さんが「え?」と言いながら私に振り向く。
私も、彼の目を真っ直ぐに見つめながら……話を続ける。


「……この結婚が白紙になることを恐れて私に気を遣っているのなら大丈夫です」


結婚は、自分が本当に好きになった人としたい。ずっと強くそう思っていた。今もその考えは変わらないし、だからこそ今日だって家を飛び出したんだ。


……だけど。


心の底ではわかっていたのだと思う。


政略結婚には抗えない。
好きな人と結婚するなんて無理なんだって……。


でも、私は幸運なんだと思う。
だって、大和田さんはこんなにかっこ良いし、年齢だって近そうだし、今日の優しさの全てが私のご機嫌取りだったとしても、彼が優しい人だからこそそうしてくれたんだ。優しくない人だったら、こんなに美味しい料理を作ってくれたりしなかっただろう。


だから、いいんだ。


「私、ちゃんとあなたと結婚します。だからこれ以上変な気を遣わないでください」


私がそう言うと…….彼は何も答えない。
それどころか、会った時からずっと笑顔を絶やさなかった彼が、どこか怖い顔をして私を見つめている。


「……大和田さん?」

「……誰が気を遣ってるって?」
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