御曹司の愛され若奥様~24時間甘やかされてます~
するとその時、コンコンと部屋の扉をノックされるのと同時に「日和?」と声を掛けられる。

返事はしない。

だけど扉の向こうにいる陽平くんは、心配そうな声色で言葉を続ける。


「どうした? 俺、何か変なこと言った?」


変なこと……は言ってない。だって陽平くんはお父様の言うことに従っただけだもの。

結婚だって、一度白紙に戻ったって、私と陽平くんが結婚したいと言い出せばきっとすぐにでも婚約出来る。

だけど。


私は、陽平くんと結婚出来なくなる可能性を不安に感じている訳じゃない。

彼の私に対する気持ちがその程度のものだったことにショックを受けている。

でも、そんなこと彼に伝えたって、彼を困らせるだけだろう。

私のこともっと好きになってと言ったって、私のことを何よりも大事にしてと言ったって、そんなのは無理だ。
彼の気持ちは、彼にしか決められない。
私が彼のことを想うのと同じだけ、彼にも私を愛してほしいなんて、無理なんだ。


返事をせずに黙っていると、気が付いたら扉の向こうに彼の気配がなくなっていた。

怒った?

……無理もない。急に怒ったり、拗ねたり……。
こんな自分、愛想をつかされて当然だ。


当然……だけど。



……私、やっぱり陽平くんと結婚したい!


「陽平くん!」


どこかに行ってしまった彼を追いかけようと、勢いよくドアを開けて部屋を飛び出そうとした。

だけど、部屋から出た瞬間にギュッと抱き締められたのだから、何が起こったのか一瞬理解不能になった。
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