御曹司の愛され若奥様~24時間甘やかされてます~
この人、今何て言った?

抗議する気はない。そう言ったの?


「な、何でですか⁉︎ 名前すら今初めて知った相手と政略結婚したって、お互いに絶対幸せになんかなれないじゃないですか! ましてや、政略結婚なんて固いこと考えている親が、結婚前に同棲させるなんて矛盾もいいところですよ! 抗議する他ないでしょう!」

冷静に自分の考えを伝えようと思っていたのに、つい声を荒げてしまった。
抗議する気はない、と私の意見を否定されたからという以上に、さっきから王子様スマイルを絶やさない目の前の彼の考えていることが一切わからないから、というのもあると思う。


「何も知らない相手と結婚するからこそ、この同棲を通して理解を深めてくれという両親達の配慮だと僕は聞いています」

「それは私も聞きましたがッ……!」

「あ。鏑木さんと小宮山さんですよね? 日和さんを届けていただいてありがとうございました。お帰りいただいて結構ですよ」

私の言葉を遮り、私の両側に立っていた鏑木と小宮山にそう伝える彼。物腰は柔らかだけれど、少々強引さも伺える。


「ではお嬢様、我々は失礼します」

「何かありましたらご連絡くださいませ」

「あっ、こら……!」

私の呼び止めにも反応せず、二人は踵を返して玄関を出て行ってしまった。


私と大和田さんの二人きりになったこの家の玄関に、シン……と静まり返った空気が流れる。
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