騎士団長のお気に召すまま
それはシアンが用意してくれたものと同じくらい素敵なものだった。

薄桃色を基調にした、可愛らしくも品のあるドレスには宝石が散りばめられており、これがいかに高価なものなのか物語っていいる。


「これは、一体…」


呆然とするアメリアに、メイドは優しい微笑みで「アクレイド伯爵からです」と答えた。


「あ、アクレイド伯爵? 本当に?」

「ええ。アメリア様がドレスの替えをお持ちでないということでしたので、ぜひこちらを、と」


信じられなかった。あのアクレイド伯爵がたかが子爵家の、それも貧乏で関わる価値のない自分にどうしてここまでしてくれるというのだろう。

いくら考えても答えが分かるわけがなかった。


「伯爵は薔薇庭園の東屋でアメリア様をお待ちになるそうです」


メイドはアメリアの髪を整えながらそう伝える。

アメリアは「そうですか」と返事をしながら、伯爵に何を話せばいいのか必死に考えていた。


着替えを済ませたアメリアはメイドに感謝を伝えた後、先ほどの薔薇庭園に戻った。

月明かりは先ほどよりも高い位置から降り注いで、星の位置も少し変わったらしい。

東屋の屋根を探しながら歩いていると、すぐに見つかった。

伯爵は東屋の柱に背を預けて、月に照らされる薔薇を眺めているらしかった。その穏やかな雰囲気と憂いを帯びた表情に、アメリアは緊張を募らせる。


「アクレイド伯爵」


声をかけると、伯爵は薔薇に向けていた目をアメリアに向ける。

そして柔らかく微笑んでアメリアの名前を呼んだ。

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