騎士団長のお気に召すまま
図星をつかれて心臓が跳ねるが、一つ呼吸を置いて「どうして、私などにこんなにも親切にしてくださるのですか?」と尋ねる。

すると伯爵は「困ったときに助け合うのは当然のことです」と言った。


「それに、僕はあなたにお会いするのをずっと楽しみにしていました」


アメリアは目を見開いた。


「どういうことですか?」


伯爵が自分との再会を望んでいた?

伯爵ともあろう方が、没落寸前の子爵家の令嬢と会うことに何の意味を持つというのだろう。

自分のことではあるが、関わることに何の得もないことはよく分かっている。


けれど伯爵は昔を懐かしむように穏やかに目を細めた。


「…幼い頃、よく遊んでいたことを覚えていらっしゃいますか?」


それは、アメリアがまだ自分を取り囲む状況を知らなかった頃。

明日のことも考えずに生きられた、幸せな時代だ。


「あの頃、僕は自分の未来を悲観していました。爵位を継ぐことの重責に耐えられなかった。

そんな時にあなたにお会いしたのです。あなたの屈託のない笑顔に、どれほど救われたことか。

この先ずっと一緒にいたいと、思いました」


信じられない言葉の数々にアメリアは目を見開いて呆然と立ち尽くす。

はっと我に返って「ご、ご冗談を」とアメリアは笑って誤魔化そうとした。

どうやったって信じられるわけがなかった。

幼い頃から自分を想ってくれている人がいたなんて、そんなことが有り得るだろうか。それも相手があのアクレイド伯爵だなんて。

けれど伯爵は「冗談ではありません」と真剣な表情を見せる。

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