騎士団長のお気に召すまま
その言葉に伯爵は目を見開いた。シアンがそう切り返してくるとは思っていなかったようだった。


「お前らしいな。流石は堅物」

「いえ、兄上のご命令に従っただけです」


それからシアンはひとつ呼吸をすると、「兄上」と自分と同じ色の瞳を見つめる。


「自分にも譲れないものがあります」

「ほう」

「これ以上の茶番はやめてください、兄上」


アメリアと伯爵が話していた内容を聞いたらしいシアンは、この兄の話にうんざりしていた。

聞くだけで憎悪がかき立てられていくようだったのだ。


「その表情も、言葉も、全部が嘘なのでしょう?」


アメリアは目を見開いて伯爵を見つめる。

伯爵は口元を押さえて俯いた。一体どうしたのかと思っていると、クスクスと声が聞こえてきた。それは伯爵の笑い声だった。それは徐々に大きくなって、やがて空を見上げて大きな声で笑った。

不気味なその笑い声をアメリアは目を見開いて呆気にとられるしかできない。

やがてその笑い声が収まると、はあ、と伯爵は息を吐き出した。



「あーあ、全部バレていたのか」



もう一度見たその目には優しさも穏やかさもなかった。

あるのは、ただ冷たい氷のような鋭い瞳。

恐怖さえ感じるその瞳にアメリアは押し黙った。

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