騎士団長のお気に召すまま
けれどシアンはそんな冷たい目に動揺せずに「当然です」と言ってのける。


「あの兄上が、恋だの愛だのといった不確かなもののために誰かと婚約するなど、あるはずがありません。きっと他に別の理由でもあるのでしょう?」


それを聞いた伯爵は「酷い言い様だな」と鼻で笑う。けれど否定はしない。

きっとそれは肯定だとアメリアは思った。


「兄上のことですから、無駄なことなんてするわけがない。僕とアメリアの婚約破棄も、それに関係しているのですよね」

「流石は弟だ、よく分かっている」


伯爵は焦ったような表情も見せずに、楽しそうに笑顔を見せる。弟が自分の性格を理解してくれていることが嬉しいんだと言わんばかりの表情だ。シアンは嫌悪しているようで眉をひそめているが。


「きっとお前はもう推理できているんだろう。お前の考えている通りだよ、シアン」

「兄上のことですからね」


くつくつ笑う伯爵に、シアンは溜め息を吐く。

何も分からないのはアメリアだけだった。

それに気付いた伯爵は「種明かしといこうか」なんて笑った。


種明かしの内容は、こうだった。

当主になったアクレイド伯爵は、年齢のこともあり、身を固めるよう周りから強く言われていた。

しかし伯爵自身はそれを望んでいない。

そこで目を付けたのが、以前から交友のある貧乏子爵家のアメリアだった。


「どうせ、契約結婚でも申し込むつもりだったのでしょう? 表の甘い顔で騙して」


溜息を吐き出すシアンに、伯爵は「騙すなんてひどいことを言う」と笑う。


「この顔は、そういうときのために使うものだ」


とんでもない腹黒兄弟がいたものだとアメリアは呆れた。



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