騎士団長のお気に召すまま
「…兄は、凄く頭の切れる人です。僕ではとても太刀打ちできません。

けれど、いつも言いなりになるのはごめんです。

一度でいいから、兄の裏をかいてみたかった。兄の驚く顔を見てみたかった」


それから逸らしていた瞳をアメリアに再び向ける。


「それに」

「それに?」

「……」


シアンは何かを言おうとして、口を閉ざす。目も逸らしてしまった。


「シアン様?」


何を言おうとしたのか聞こうとするけれど、シアンは「何でもありません」と言うだけで理由を言おうとしない。

何か隠しているのはアメリアには分かっていた。けれど問い詰めようとする前に、遠くからアメリアの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


「アメリア嬢!」


アメリアを探すように呼びかけているのはヘンディーだった。シアンと共にいるアメリアに気付いたヘンディーは駆け寄ってきた。


「アメリア嬢!探しましたよ!…って、シアン!それに、あれ、ドレスが…」


優しい瞳から一転、目を丸くするヘンディーに、アメリアは何と答えるべきか困って「色々とありまして…」と笑うのが精一杯だった。

ヘンディーは顎に手をあて「ふうん?」と不思議そうな顔をするが、すぐに「そのドレスもお似合いですね」と事情を聞かずに明るく笑った。

それにほっとしたが、ヘンディーが自分を探してくれていたことに気付いて頭をさげる。

すると彼は「いえいえ、無事で何より」と穏やかに笑う。その優しさにアメリアはまた感謝した。


「見つかって良かったな、シアン」


ヘンディーはシアンの肩を組みながらそう笑いかける。

「なぜ肩を組むのです」とシアンは心底嫌そうな顔をするが、ヘンディーは気にせず話を続けた。

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