騎士団長のお気に召すまま
その言葉にアメリアは目を見開いた。

その顔を見たシアンは思いっきり顔をしかめて「なんて顔をするんです」と言う。


「ただでさえ没落寸前の貧乏子爵家なのに、その上傷がついたら誰ももらってくれないでしょう」

「ひどいですね」

「それに今回、調査を許可したのは僕です。責任は僕にありますから」


アメリアのことで責任は自分にあるとシアンが言うのは何度目だろう。

なんだか義務のようにも思えて、なんだか嫌だなとアメリアは思った。


「…傷が残らなかったら、もらってくれないんですか?」


その言葉にシアンは目を見開いた。

それから眉間に皺を寄せて「誰を相手に挑発しているんです」と睨みつける。


「傷があっても、なくても。

僕は最初から貴女がほしかった」


今度はアメリアが目を見開いた。

それからふっと笑いだしてしまった。止まらないのだ。


「何を笑っているんですか」


案の定機嫌が悪くなるシアンに、アメリアは笑いをこらえながら言う。


「い、いえ、だったら最初から言えばいいのにって思っただけです」

「馬鹿ですか。最初から言ったら意味がないでしょう。兄上に結婚の自由をもらうためと、本当の僕を見てもらうために入れたのに」

「え?」


ぽかんと口をあけるアメリアに、今度はシアンが笑った。


「あほな顔ですね」

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