騎士団長のお気に召すまま
家督を継ぐはずの子爵家令嬢がこうして騎士団で働くなど、これ以上に屈辱なことはないだろう。

いかにアメリアがこの前、騎士団で働くことを承諾したとしても、さすがに父親であるミルフォード子爵が止めるに違いないとシアンは思っていたらしい。

そして、このように失礼な態度をとることによってミルフォード家が今後アクレイド家に関わらないようにさえしようとしていたのだと言うから、アメリアは目を丸くした。



「…とんだ腹黒いお方なのですね。性格の悪い」



思わず本音が口から洩れる。

はっと口元を隠してもすでに遅く、シアンは眉間にしわを寄せて、レオナルドは笑いを必死にこらえようとしていた。


「…レオナルド、何を笑うのです」


シアンは視線を逸らさずに眉間の皺を濃くしながらレオナルドに問う。口調は穏やかなものの不機嫌であることが十二分に伝わってくる。


「い、いやっ、何も…っ」


レオナルドは必死に堪えようとしていたが不可能だったようだ。

ぶっと吹き出したかと思うとお腹を抱えて笑った。

突然のことに驚いたアメリアは肩をびくりと上下させた。


「まさかシアン相手にここまで言う女性が現れるなんて思ってもいなかったなァ」


「本当に面白いお嬢さんだ」とアメリアは何度か肩を叩かれた。褒められたのかそうでないのか、アメリアには判断が難しい。


レオナルドが笑い続けるので、シアンは「とにかく」と咳ばらいをしてアメリアに言った。


「あなたがミルフォード子爵家のご令嬢であるからという特別な配慮は一切しません。騎士団で働く以上、一団員として扱わせていただきます」


それで構わない、とアメリアは思った。

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