臆病でごめんね
「ちょっと夢乃。お姉ちゃんに向かってそんな事言うのはよしなさい」

「だってホントのことじゃん」


生意気に口答えしながら食器棚へと歩を進める夢乃を眺めながらため息を吐いた後、お母さんは話を転換した。


「っていうか、「ご飯よ」って声をかけたらすぐに降りて来なさいな。塾が休みの日くらい一緒に食卓を囲みましょうよ」

「塾がないからこそ自習してたのよ」

夢乃は茶碗類を出しながら言葉を繋いだ。

「第一志望の国立大に受かるには、それなりに努力しないと」

「受からなかったら受からなかったで別に良いじゃないの。私立でも充分通わせてあげられるわよ?女の子なんだから、そんなに必死にならなくても」

「お母さんがそういう甘っちょろいことを言ってるからお姉ちゃんがそんな風に育っちゃったんでしょっ」

ご飯をよそっていた夢乃は炊飯器の蓋を閉めつつ勢い良く振り向き、いかにも憎々しげに吐き捨てた。

「向上心が皆無でそのせいで周りに迷惑をかけまくってるのに全然自覚が無くて、自分にとって都合の良い意見しか耳に入って来ないどころか下手すりゃ変な風に事実をねじ曲げて美化してそれを自分の中での真実にしちゃう、質の悪い夢見る夢子さんな女にね」

「なっ…」

「そうなりたくないから私は今、必死に頑張ってるの」

そこで夢乃はお母さんから私に視線を移した。
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