臆病でごめんね
「進学希望でありながら何の準備もしてなかったから行ける大学がなくて、すがるように専門学校に入り、そこまではまぁ別に良いとして、最終目標である資格取得に失敗してこれといった技能も無いもんだから案の定どこの企業にも拾ってもらえずとりあえずフリーターになったけど行くとこ行くとこ長続きせずに現在に至る、だもんね」

言うごとにどんどん興奮が増して行っている。

「一つの分野を専門的に学べる学校に通っていながらその試験に落ちるって、本来ならありえないからね?実際にあの学校を出た人の中には資格を活かして一流企業に入ったり公務員になったり税理士になれた人もいるんでしょ?努力すればいくらでも高みに行けたのに、二年間どれだけぐうたらと過ごしてたのよ。しかも結構な額の費用を家計から出させてさ。結局すべてが水の泡じゃない」

「そんな事は別に良いのよ。子供が独立するまで親がサポートするのは当たり前なんだから」

お母さんが言葉を挟んだけれど、夢乃はそれには反応せず続けた。

「それで最終的にやりたくなかった仕事に派遣として就く事になり、やりがいを見いだせないからノロノロダラダラと動いて周りの人をイライラさせてんでしょ?きっと」

「一生懸命頑張ってるお姉ちゃんにひどいこと言うんじゃないの!」

言いたい放題のその態度にとうとう堪忍袋の緒が切れたようで、お母さんが興奮気味に反論した。

何も言えずに黙っている私を不憫に思ったのだろう。

お母さんは常に弱い者の味方だから。

「回り道をしたけど、今は定職に就けたんだからそれで良いじゃない。派遣とはいえあの天下の若宮商事に潜り込めたんですからね。職種が気に入らないのかもしれないけど、職業に貴賤はないのよ」

「話をすり替えないでくれる?私はお姉ちゃんの仕事自体をバカにしてる訳じゃないから」

夢乃は今度はお味噌汁をお椀に注ぎ入れながら主張した。
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