臆病でごめんね
お母さんは突然はしゃぎ出した。

「今はこんなだけど、昔は20キロ以上痩せててすごく華奢で儚げだったのよー。それで当時、競争率の高かったお父さんを見事射止めたってワケ。夢乃はお父さん似、茅乃はお母さん似っていろんな人に言われるからね。あなたも磨けば絶対にいい線行く筈なのよ」

もう完全に浮かれてまくっている。

「それなのにあなたってば今時の子にしては珍しく奥ゆかしくて控えめな子なんだからっ。もっと自分に自信を持ちなさいな」

お母さんはその後もあれこれ言っていたけれど、途中から聞くのを放棄した。

どうせいつもと同じパターンだろうから。

昔から数え切れないくらい「あなたは磨けば光るんだから」から始まるお母さんの自慢話を散々聞かされてきたので、もういい加減耳にタコ状態なのだった。

「それはもう充分分かってるから」と。

それよりも今は気がかりな事がある。

要するに夢乃は私の事を、もう2年以上も前から恨み続けているということだ。

どうりでその頃からあの子のお小言が増えて来たワケだ。

昔からこまっしゃくれていて生意気で偉そうだったけど「もうすぐお姉ちゃんは社会人になるんだから、甘えは許されないよ」「今のうちに頑張っておかないと年取ってから苦労するよ」と更に口うるさくなった。

「いい加減で適当で頭がお花畑で、結局は自分が一番大好きなお母さんの言うことなんかアテにしないように」とも言っていたっけ。
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