臆病でごめんね
「あ、お疲れ様です」

遅番のお昼休み、控え室に入ると派遣元の営業社員である宇梶という女性が待機していた。

企業と派遣スタッフの橋渡し的な存在で、定期的に私達の様子見と雇い主へのご機嫌伺いを兼ねてこの会社を訪れているのだけれど、今回は急遽訪問することになったらしい。


「さっそくですけどお話があります。早番の方には先ほど周知したんですけど、実は…」


宇梶さんは遅番メンバーが揃った所でかくかくしかじかと解説を始めた。


「と、いう訳なんです。それで私が馳せ参じた次第で」

「そうでしたか。ご迷惑おかけしてすみません」


この現場での責任者である阿川先輩は代表して、とても神妙にそう言葉を発した。

何でも、複数人の社員が総務課に「外田さんという人が後片付けを担当した日の給湯室がとても汚くて困る」と苦情を言ったらしいのだ。

漂白した後の布巾が干されていなかったり生ゴミが処理できていなかったり流しや床が異常に濡れていたり。

「社員さんは皆忙しい仕事の合間を縫ってお茶当番をこなしているそうなんですよ。次に使う人の事を考えて、美化整備に努めながらね。だけど、最後に作業する人に適当にやられたらすべて台無しになってしまうんですよね」
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