【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
「いい?彩羽ちゃん。
蘭は目を離すとなにやらかすか分からない男だから、ちゃんと見張っててよ。
じゃあね」
それだけ言って、運転手さんに颯爽と車を出させる歩夢さんの姿は、まるで王子様みたいだった。
歩夢さんは親が社長で大金持ちらしく。
昨日から乗ってばっかりの黒塗り高級車は
歩夢さんだけのために用意された専用車らしい。
でも...なんでそんな人が、暴走族なんかに入ったんだろう。
やっぱり歩夢さんは不思議な人だ。
エレベータの中は沈黙と静寂の嵐。
蘭君が人差し指でボタンを押したらゆっくりと上昇し始めた。
「帰れ」
高級マンションの最上階は、いつ見ても慣れない。
蘭君の部屋の玄関前までせっかくついてきたのに
きつい一言が、私を待ち構えていた。