【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
「大丈夫だよ、彩羽ちゃん」
「...えっ?」
「どうせ蘭のやつがなんかひどいことでも言ったんでしょ?」
「...っ、蘭君はなんにも悪くないんです...ただ、」
「ただ?」
「...蘭君から、なにか聞いてませんか?」
「蘭は自分のことは喋らないよ。
でも俺は、彩羽ちゃんと蘭が一緒に居ないことは知ってたよ」
「知ってたんですか!?」
「うん。蘭のやつ、最近ずっとイライラしてたから」
「そー...ですか」
気晴らしに空を見上げても、最近視界が暗いのは、気づかないうちに顔を下に向けているからだ。
歩夢さんと喋っている今だって、思いっきり目線を逸らしてしまった。
"蘭は自分のことは喋らないよ"
歩夢さんの言葉が、胸の奥に引っかかって、あの日を思い出させる。
蘭君から感じた闇
蘭君は何かを隠してる...
いや、隠してるんじゃなくて、抱えてるんだ。大きな闇を。
だってそうじゃなきゃオカシイよ。
彼の瞳に誰もが持っている希望の光が宿っていないこと。
キスされたときに感じた唇の冷たさが、未だに違和感を残したままだ。