【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
*
電話でタクシーを呼んで、数分が経つ。
外に明かりなんか見当たらないから、運転手さんもやっとの思いで私たちの存在を見つけてタクシーを止めた。
「えっ、彩羽帰らないの?」
タクシーに光花が乗ったのを確認して、運転手さん側の窓を叩いて"車を出して"の合図。
まだ開きっぱなしのドアから、光花の声が聞こえてきた。
「うん、やっぱりちゃんと。あの人にお礼言いたくて」
「まさかお店の外で待っとくつもり?」
「うん」
「危ないよ!さっきあんな目にあったのに、あんたって懲りないのね。
もうお礼は言ったんだし、いいじゃん、私と帰ろう?」
「ごめん光花...わたし、やっぱり名前だけでも知りたくて。
あんなひどい人達から救ってくれたんだもん、絶対お礼しなくちゃ。
終わったらちゃんとタクシー呼んで帰るから、安心してよ」
「...はあ...ちゃんとお礼しないと気が済まないなんて、あんたらしくてイイとは思うけど。
こういう時めんどうよね、その性格」
「あはは...自分でも思います」
"家に着いたらちゃんと連絡してね"と。
最後まで心配してくれた光花が、私の頑固さに負けてタクシーを出した。