【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
タクシーは暗闇の中へと溶け込んで、消えていく。
さすがにお店の中に戻るなんて、そんな勇気はなくて。
お店の前でジッと彼が出てくるのを待っていた。
夏の夜は、クラクラしちゃうほど暑くて、耐えられなかった汗が肌からすべり落ちていく。
暇つぶしにスマホをいじっていても、考えてしまうのは店員さんのことだけ。
冷たい口調
冷たい瞳
冷たい態度
"優しさ"とは無縁そうな彼が、隠し持っている優しさに触れてみたいと思った。
それから数時間が経った。
いつになったら彼は現れてくれるのか。
ついにスマホまで充電切れ。
ウトウトと。瞼が重い。
こんな所で眠るだなんて、自殺行為なのかもしれない。
だけど、人間睡魔に勝てないの。
いっそこの睡魔に身を任せて、意識をなくそうとしたその時。