【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
「...ごめんなさい...」
自分でも気づかないうちに、その場に倒れ込んでいた体を起こして、取り乱してしまったことを歩夢さんに小さな声で謝った。
「いろは...ちゃん...」
一瞬伸ばした手を引っ込める歩夢は、とても辛そうな顔で私に手を貸すことを我慢していた。
もういいよ...歩夢さん。
わたし、ちゃんと歩夢さんの立場...分かってるからさ。
もう...いいんだ。
「...」
ゆらりゆらりと、深海魚のように暗い海を彷徨(さまよ)えるのなら、どれだけ楽だっただろうか。
今日はもう、蘭君に会える気がしない。
会えないならここに居る意味が無いから、帰りたがらない子供が駄々をこねるみたいに、わざとらしく足を引きずって倉庫から出た。
潤んだ瞳から一粒も涙を流さないように、唇を噛み締めて我慢した。
我慢したから、ねえ蘭君
褒めてよ。
「...っ...」
この前までちゃんと笑い合えてたはずなのに
なんでこうなっちゃうのかな...?
せめてワケを、せめて私にだけはちゃんと向き合ってほしかった...。
きっともう、遅いんだろうけどね。