【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
頭で訴えかけても、父さんからの返事は当たり前返ってこないことくらい俺だって知ってるさ。
「いってきます」
「蘭、給食袋忘れてるわよ」
「あっ、ありがとう母さん」
玄関で靴を履いてる俺に、給食袋を渡すついでに頭を撫でてくれる母さん。
母さんの手は暖かくて好きだ。
「もう、蘭は忘れん坊ね」
「忘れても、母さんが思い出させてくれるだろ?」
「あらー?どうかしら。
母さん、ずっと蘭のそばにいるわけにもいかないしね。」
「...俺は、ずっと母さんの隣にいたいよ」
「蘭も大人になったら、私から離れていくのよ」
「そんなことねーよ!!!!!!」
「...らん」
母さんにとっては何気ない会話でも、母さんのことが大好きな俺は、そんな話されてもイライラするだけだ。
怒りをぶちまけるように、思わず大声を出してしまった。
ハッと我に返って、恐る恐る母さんの顔を見上げると...。
母さんは眉を下げたまま口角だけを無理矢理上げて、作り笑いしていた。
「ご、ごめ...っ」
「うん、ごめんね。
今のは母さんが悪かったね」
「...母さんは悪くねーよ...。
ただ、俺まだ小学生だもん。
母さんの隣にいたいよ」
「うん、そうだね。
母さんも蘭の隣にいるから。
ずっといるから、ね?」
「...うん...っ!」