【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
「やっぱ冬の虫って、あんまりカッコイイやついないな〜」
「そうだな〜。
カブトムシとかクワガタとか、夏の虫は強くてかっこいいよな〜!」
街から少し離れた自然だらけの場所に来て、子供らしい会話が木の下から聞こえてくる。
俺は1人、木に登ってぼんやりしていた。
「...俺、やっぱ今日は先帰る」
手も使わずに木から器用に下りて、俺は友達2人にそう言った。
「蘭また明日なー!」
「またなー!!」
虫に夢中なコイツらは、俺なんかいなくても楽しいから無理に引き止めたりなんかしない。
そういうベタベタしてない関係を俺は気に入っている。
*
「ただいまー」
家に着いた頃には、辺りは暗くなっていた。
ーーーガチャリと開いたドア、いつもは明るい部屋の中が今日は電気がついていない...。
「...母さん?」
リビングにひょっこり顔を出しても、この時間はエプロン姿でご飯を作ってるはずの母さんの姿がない。
おかしいな...
買い物にでも出かけたか?
でも、出かけるなら俺が帰ってくること分かってるから
電気はつけっぱなしで行くはずだよな?