伯爵令妹の恋は憂鬱
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本邸に戻って二週間がたった。
マルティナは家庭教師の来る時間と、食事の時間以外、部屋から出てこない。
ちょうど帰宅したとき、泣いているエルナの世話で手一杯だったエミーリアは、帰宅直後のマルティナの顔を見ていない。
その後、フリードを介してマルティナが選んだという髪飾りをもらい、お礼を言いに部屋に行ったが、「疲れているからごめんなさい」と顔も見せてくれなかった。
フリードもディルクとともにその日から執務室にこもり、まるで顔を合わせるのを避けているように、エミーリアが眠っているタイミングでばかりエルナに会いに来る。
加えて、数日前からアンドロシュ子爵家の子息ミフェルが本邸に出入りするようになった。フリードは側近の一人として重用するつもりらしく、本邸の一角に部屋まで用意させたのだ。
それを知ったマルティナは、ますます顔を曇らせ、食事もあまりとらなくなってしまった。
トマスの姿もずっと見えないことから、エミーリアは別荘で何かあったと考え、昨日、ローゼを呼んで話を聞いた。
遺書探しの件、ミフェルがリタと年の離れた友人だということ、そして遺書に書かれていたというマルティナとの縁談。トマスが、夜に出て行ってしまったこと。
聞いているだけで頭が痛い。これではマルティナに元気がなくなるのは当然だ。
エミーリアはエルナの夜泣きで昼も夜もない状態だったが、この状況についに我慢の限界を迎えた。
「納得がいきません」
エルナの昼寝のタイミングを見計らって、エミーリアはフリードの執務机の前で仁王立ちする。