伯爵令妹の恋は憂鬱
*
トマスはその日、養蜂家のもとを訪れていた。
以前から準備していたということもあり、フリードは領内の養蜂家のリストを完璧に作り上げていた。
貴族と個別に契約を行っている養蜂家と個人で街の店に卸している養蜂家とがいて、今回取引相手となるのは今まで個人商売をしていた養蜂家のほうだ。
トマスは、ディルクの屋敷に身を寄せてから、会社経営に関する基本精神をスパルタで叩き込まれた。
フリードが会社を興そうとした目的は、金もうけというよりは目の行き届く流通経路の確保と一定の基準を決めることによる市場の安定だ。高すぎず、安すぎず。労働力が正しい対価で測られるよう気を付けつつ、買い取り額や販売額を決める。
それらすべてを、トマスはディルクと相談しつつ決めた。
そして数回、ディルクが付き添って養蜂家のもとを訪れた。
そこでディルクは、トマスの交渉術の高さを思い知らされた。相手の立場を汲んで譲歩しているようにみせて、実際は自分の主張するところは曲げていない。いつの間にか、相手は自分の意志でトマスと契約を結んでいく。
ディルクは驚いたが、よくよく考えれば、不思議でも何でもない。
トマスはベルンシュタイン伯爵の屋敷で、使用人の息子として生まれながら、ギュンターやエミーリアに一目置かれ重用される立場を維持していたのだ。それは、生まれてからずっと、相手の気分を損ねずに目的を成し遂げる訓練をし続けてきたようなものだ。
トマスはその日、養蜂家のもとを訪れていた。
以前から準備していたということもあり、フリードは領内の養蜂家のリストを完璧に作り上げていた。
貴族と個別に契約を行っている養蜂家と個人で街の店に卸している養蜂家とがいて、今回取引相手となるのは今まで個人商売をしていた養蜂家のほうだ。
トマスは、ディルクの屋敷に身を寄せてから、会社経営に関する基本精神をスパルタで叩き込まれた。
フリードが会社を興そうとした目的は、金もうけというよりは目の行き届く流通経路の確保と一定の基準を決めることによる市場の安定だ。高すぎず、安すぎず。労働力が正しい対価で測られるよう気を付けつつ、買い取り額や販売額を決める。
それらすべてを、トマスはディルクと相談しつつ決めた。
そして数回、ディルクが付き添って養蜂家のもとを訪れた。
そこでディルクは、トマスの交渉術の高さを思い知らされた。相手の立場を汲んで譲歩しているようにみせて、実際は自分の主張するところは曲げていない。いつの間にか、相手は自分の意志でトマスと契約を結んでいく。
ディルクは驚いたが、よくよく考えれば、不思議でも何でもない。
トマスはベルンシュタイン伯爵の屋敷で、使用人の息子として生まれながら、ギュンターやエミーリアに一目置かれ重用される立場を維持していたのだ。それは、生まれてからずっと、相手の気分を損ねずに目的を成し遂げる訓練をし続けてきたようなものだ。