伯爵令妹の恋は憂鬱
「……マルティナ」
「はい」
「俺と一緒に生きてくれますか。……楽な暮らしをさせるまでには、ずいぶんかかると思うんですが」
「はい!」
迷いのない返事に勇気をもらい、トマスは今までの我慢をかなぐり捨て、彼女を抱きしめた。
「きゃ」
「あーヤバイ。正直、十六のお嬢さんをもらうのは相当変態臭いなって思ってるんですけどね」
「ダメですか」
「ダメじゃないです。でも一度タガが外れるともう我慢できないんで。……後悔しても知らないですよ」
「後悔なんてしません!」
ずっと守りたいと思っていた、可愛らしい少女の大人びた笑顔を見て、トマスは内心で安堵した。
これからは自分を偽らなくていいのはトマスも同じで、恋しい人を思って眠れない夜をもう過ごさなくてもいい。
力が抜けたように、トマスはマルティナの肩に頭をのせた。
「と、トマス。どうしました、具合悪い?」
「違います。でも、……しばらくこうしていてください」
敬語が抜けるのにはしばらくかかるだろう。
それもいい。だってこの先いくらでも一緒にいるのだから。